春よ来い
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いつも、その鮮やかな色、絵のような質感、明らかに他のどれとも違う写りに、
このフィルムのスキャンを見た瞬間、世界が変わった気がするほどだ。
催眠術にかけられて、それを醒ますのに目の前でパチン!と指を鳴らされたら、
その、醒めた瞬間に目に入る景色はきっとこんな感じなのだろうな、というか。
これをカラーというならば、普段使っているカラーはセピアである。
自分にとってはこの上なく貴重なフィルムなので、残り少ない在庫はバラ用にと、
年に2本を目標に大切に温存しているアグフア・ウルトラ。
滅多に使わなくなってしまった今だから、改めてそう強く感じたのだろう。
今回使ったのは、1本だけ、2000円で落札した冷蔵保存のもの。
自分が期限内に買ったものはずっと冷蔵保存してあるが、
オークションでの買い物にはそれほど信憑性がないと思っているので
久し振りだということもあってこの1本はバラ以外に使ってみようと、
それでも1年近く前から常温のまま置いてあったフィルム。
できれば遊園地とか、モールとか、色のある場所で使いたいと思いながら、
機会を逃したまま時間が経ってしまったものだ。
最近7で4本撮ってみて一番感じたのが、フィルムの表現力。
自分が使っているほかのどのカメラよりも、
そのフィルムの特徴をストレートに表す気がしていた。
それで途中からは意図的に、すべて違うフィルムでテストしていのだが、
そろそろテストから実写段階にしてもいい頃合だし、
普段使っているISO100のフィルムは大体試してしまったし・・・
と、そこでウルトラが標的に入ってきたのだった。
そしてこうして見ると、その印象は間違っていない気がする。
しかもバラはもちろんだが、この、いつもの景色を撮ったときの驚き。
今さらだが、見慣れたものが一気に新鮮な景色に変わるという点では、
このフィルムは普段使いでこそその威力を発揮するのかもしれない。
もともとウルトラはアンダーで粒状感が出やすいとは思うが、
写真によってISO100とは思えないざらつきなのは
期限切れの影響も若干はあるのかもしれない。
好みはあるだろうが、私はそのざらつきさえも嫌いではない。
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さて、ここまで7で撮ってみて、あらためて感じたことをいくつか。
まず、使いにくい点。
●レンジファインダーの、ファインダーとレンズが別という構造に慣れない。
(こちらに非常に詳しく分かりやすい原理が載っています)
→左手でピント合わせをする際、下からのみしかレンズが持てない。
→同様に、縦位置でのピント合わせがしにくいので横で合わせてから縦位置に。
●さらに、f0.95を装着した場合、レンズがファインダーの一部に重なって、
フレームの一部が見えなくなってしまうので、構図、特に水平を取りにくい。
●露出計も連動はしているが外部なので、
→ファインダーを覗いたまま確認できないのが不便。
→実際にシャッターを切る段階では被写体からずれてしまい、
スポット測光したい場合は勘に頼るしかない。
●とにかく重い。
私は散歩のとき、カメラを肩に掛けたりバッグに入れたり、まして首から提げたりできず、
フィルムが終わるまでは歩いている間中、左手に持っているので、3時間が限度。
そして、良い点
●ピントについて、
→「当たり外れがある」、極端なものでは「ピントは合ったとしても中央部分のみ」
などの意見を目にして心配していたが、当たりなのかどうなのか、
私のカメラとレンズでは今のところほとんどピンボケはない。
おかげで最初は諦めムードだった縦位置の写真も撮れている。
→開放時のボケはまさにミラクル。
●それぞれのフィルムの特徴がストレートに表れる。
フィルムフェチにとってはまたとない、嬉しい性能。
●電池が要らない。電源オン・オフの心配をしなくてよい。
●撮っていて楽しい。それどころか所有しているだけで楽しい。
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ということで、撮るたびに「今回は失敗だろうな・・・」と思ってスキャンしているが、
スキャンを見るたびに「買ってよかった!!」と、今のところは思っている。
さて今回のルートは仙台坂~南麻布~有栖川公園~広尾(渋谷区)。
風はあるが比較的暖かく、直射日光の当たる場所は暑いくらいだったが、
昼過ぎから急転直下、太陽が隠れ、嵐の前のような北風が吹き始めた。
地震の前のような天気だったので家に帰ろうか迷いながら足を速めたが、
30分ほどで徐々に陽射しが回復し、再び好天となった。
久し振りに五の橋のガード下辺りを見に行ってみたが、
青山橋が撤去されたあとも工事現場になり、大きなビルが建ちそうだ。
私が好きだった混沌とした一角も、温かみのある混沌から、
そっけない、ただ荒れただけの混沌になってしまっていて寂しかった。
下の2枚は日中の晴天時、ND8にND4を重ねて撮った。
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