HARUJION-ハルジオン-(32)
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早朝、赤坂で桜を撮った残りのフィルム消化も兼ねて、
久し振りに麻布台を回って帰ることにした。
前回きた時は季節的な要素もあって、今ひとつ収穫のなかった道。
この日は午後近くになって空も晴れたので、本来なら途中で帰ってもよかったのだが、
もう少し歩いてみようという気になったのである。
撮り始めてすぐに、道端に1本、スッと立った花に目を奪われた。
ドキッとするほど彼女は美しく咲いていた。
ハルジオン。通称「貧乏草」。
もともと私はこの花が大好きだ。1本でも、まとまって咲いていても絵になる。
けれど、この色のハルジオンに出逢ったのは生まれて初めてだった。
しかもブロック塀に沿ってたった1本、長い茎がまっすぐに伸び、
花も大きく立派で、今までに見たどんな花をも凌ぐ存在感を放っていた。
もちろんすぐに撮ろうとしたが、そこで気づいた。モノクロフィルムである。
さすがにこの子をモノクロで撮る気にはならない。
一瞬迷ったが、その時残っていた4~5枚のフィルムをその辺りにあったもので消化し、
予備で持っていたウルトラに入れ替えた。
こう書くとたいしたことではないのだが、自分にはとても珍しいことなのである。
4~5枚とはいえ消化するためだけにフィルムを使い切るのも、
帰ろうとしている時にその被写体のためだけに新しいフィルムを入れるのも。
さらに、いつもなら1つの被写体を撮るのは1枚のみなのに、
今回は角度を変えて4枚も撮っている。銀塩では初めてのことである。
それぼほどの魅力が、このハルジオンにはあったのだ。
ただ、この写真では、肉眼で見たこの子の素晴らしさの1/100も表現できていない。
念のためのカラーフィルムは持って出かけたものの、モノクロメインだったのでR1を使用。
いつもなら装着しているはずのPLフィルターを、用意するのをすっかり忘れていた。
つまり、カラーで撮ることはまずないだろうと思っていたのだ。
このカメラとレンズで、カラーで撮る可能性がもう少しあれば、PLだけでなく、
クローズアップも持って出かけていたはずなのに…。
それに期限切れの影響もだいぶ出てきてしまっている。
ただ後悔するしかないのだが、それが残念を通り越して無念ですらある。
未練があって翌週も見に行ってみたが、真ん中の子はすでに萎れ、
こんなに濃かった周りのピンクの蕾も、咲くと普通のハルジオンの薄ピンクになっていた。
この、麻布台の立ち退きが停滞した通りから、大久保八幡に上った。
そこでレンズを135/2.5に替え、桜などを撮ってフィルムを終え、帰途についた。
ここにも花見に訪れる客がいるのだろう、地面はシート用に区切られ、照明が用意されていた。
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アルバムはメインサイト路地裏の花たちにて。
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