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2009/02/14

谺 -世界で一番輝く光-(20)

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この日のルートは、仙台坂から南麻布に入り、裏道を通って有栖川公園へ。

途中にあるこの建物が、たまらなく好きだ。

 

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以前前を通りかかった時から気になっていた建物。

一方通行とはいえ車通りの多い坂道に、

ひっそりと佇んでいる、小さなビル。

朽ちてはいるものの、一見しただけでは、

まだ人が住んでいそうな雰囲気だった。

 

何ヶ月か経ってまた前を通ってみた。

その日のその時間、

玄関のガラスブロックから刺す西日が、


こちら側の世界

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と、入ってすぐの壁にある鏡に、


むこう側の世界

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を映し出していた。

 

建物の中に入ると、ドアは錆び、壁は朽ちていたけれど、

そこには濃く、生の気配が漂っていた。

しかし誰もいない。

誰も住んでいるはずのない朽ち方。

生の気配は、過去の記憶。

建物自体が抱く記憶が、そこここに零れ落ちていた。

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人の足が踏まなくなって久しい玄関に、

過去の記憶と生活が、

輝く光のように、谺(こだま)していた。

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ひっそりと、

ひっそりと、

静かな死を待つその建物で。

 

 

 

 

 

 

 

 

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アルバムはメインサイト路地裏の花たちにて。

 

 


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