明日への祈り-回帰vol.5-(34)
麻布十番、元麻布、三田小山町、南麻布
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昔から、公園や寺社に囲まれ、大使館が密集するこの町は、
生活するには便利で環境のいい場所として人気があった。
繁華街である六本木と隣り合わせでありながら
老舗の和菓子屋や隠れ家的な飲食店が多かったのも、
新しいものと古いものとが共存すると言われる一因だった。
この数年、観光ばかりでなく移住者の数も激増し、
まさに町は過渡期を迎えている。
至る所でビルが建ちはじめ、日中歩けばさながら工事銀座だ。
ある人は土地を売り町を出て、ある人は自分でビルを 建てる。
そこに大手資本の店が入る。
結果的に残るものは、なんだろう?
やってきた人たちが求めていたはずの『古いもの』は何も残らず、
そう遠くない将来は、どこにでもある店が並ぶ町になるだろう。
けれどきっとその流れは、ずっとずっと昔からはじまっていて、
誰にも止めることができなかったものなのだ。
なぜなのか人々は、それを強いられているかのように
変化する速度を早めずにはいられない。
まるでそう、泳ぎをやめると死んでしまう回遊魚のように。
それならそれでいい。
それが決められたことならば。
ただ、すべて壊しつくし、新しいもので町が埋め尽くされたとき、
それで心から『良かった』と。
誰もが思える結果であることを祈るだけ。
今在るものを壊すことは簡単でも、
それを取り戻すことは、
もう二度とできないのだから。
そしてここで育った私たちには、
帰れば緑に包まれているはずの故郷は、どこにもない。
2007年06月01日の日記より
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アルバムはメインサイト路地裏の花たちにて。
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