『砕かれた街』
とはいえアメリカ屈指のハードボイルド作家、ブロックが書いたのだから、当然のごとく『死』そして『殺し』のシーンが多々登場するにはするのだが。
ただ本書の中では、その殺人者でさえ歴然とした『悪』ではない。
マット・スカダーシリーズで時折描かれるような倒錯したセックスシーンもふんだんに登場するにもかかわらず、それは『悪』に付随するものではなく、『生』に付随するものとして描かれている。
上巻あたりでは(殺人の容疑をかけられるという主人公クレイトンの陥った状況を別にして)、いつ、誰が、どのような陰謀に巻き込まれるのか、どんな種類のサスペンスが起こるのか、ある意味『どんなヤバイ状況になるのか』常に身構えながら読んでいた。
それが鼻につくまでいかないが、ところどころ、スカダーシリーズを髣髴とさせる言い回しや価値観が出てくる場面もある。
しかし読後の今残った感想は、強いて言うなら、本書は『ロマンス』の部類に入るのではないかということだ。
出版社的には『サスペンス』とあるのだが、911のテロ、その1年後に突如起こる連続殺人を背景に、作者のブロックは自分自身にも向けて『生』、それも『力強い生』…生きる力を描こうとしたのではないだろうか。
物語はハッピーエンドである。
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